2013年01月12日
No.07 朗読P 「SIGMA DP2x & DP1 Merrill」
初めてデジタルカメラという道具に触れたとき、その便利さに感動はしたものの、画質の面ではなかなか満足がいかない、という日々を長らく過ごしてきました。
自分の見たものとその場所の空気を余すところなく切り取りたい。色、感触、香りまで鮮明に感じられるような一枚を撮りたい。
ずっとそれを願い、いくつかのカメラを試してきて、でも叶わず、かといって一眼レフは高いし重すぎて使いたくない。そんなある種「無茶苦茶言うな」と怒られそうな悩みをずっと抱えていました。
そんなある日、一枚の写真に出会いました。たしか梅雨どきの雨露にしっとりと濡れたアジサイの写真だったように記憶していますが、見たときは驚きました。それはとても明瞭で鮮やかだったのです。そして、とてもとても自然な、そこに実際にあるような、見た目でした。かつて私が、そう撮りたいと願ってきたような。
花びらのくっきりとした像、わずかにグラデーションのかかった花の青さと葉の緑の彩り、水に濡れた植物の質感、滴に映りこんだ光のきらめき。今までの「デジタルカメラだとこのくらいの写りだろうな」という考えを一新させられる、そんな一枚でした。
撮影者によると、DP2xというカメラで撮ったとのこと。聞いたことのない型番でした。SIGMAというメーカも、当時の私は知りませんでした。でも、迷うことなく私はそのカメラを買いました。10分も悩んでいなかったように思います。
さて後日。いざカメラが届いて取り出してみると、まずはその小ささに感心しました。コンパクトカメラと大して変わらないサイズと軽すぎない重さ。私の小さめの手でも、もて余すことがありません。
一方で、次に電源を入れて思わず苦笑い。メニュー画面は、お世辞にも大手各社と比べて操作性が良いUIとはいえませんでした。また単焦点レンズなので、当然ズーム機能もなし。他社なら当たり前のようについている手振れ補正機能もなし。まるで「最高の一枚を撮らせてやる。だから、その他のものはいらないんだ」と言わんばかりの割り切り方。明らかに、初心者が手軽に使うカメラではありませんでした。使用者にある種の覚悟を、撮影するという行為と被写体に対して、真摯に向き合う誠実さを求めるように、私には感じられました。
でも、です。だけど、です。使ってみたい、使ってみせると強く思わせる抗いがたい魅力もまたこのカメラにはありました。
そんなこんなで、この日以降、普段何かを撮るときはDP2xと、その後新しく開発されたセンサーを採用した広角域のDP1 Merrillを使っています。
DP1 Merrillでは、前述したイマイチなメニューからUIの大幅な改善がなされ、また新しいセンサーがこれまで以上の写りを見せてくれます。とはいうものの、バッテリー1個で撮影できる枚数は100枚程度しかありません。相変わらず「写り最優先」なのだなあ、と半ばあきれながらも、メーカのその開発方針を私は信頼しています。
ところで、DP2xは、使いはじめてもう一年半ほどが過ぎましたが、歩留まり率は正直よくありません。私の未熟さによるところもありますが、10枚撮って、1枚成功していればいい方です。
ですが、このカメラは10枚撮って10枚とも80点を狙うような機種ではないのです。10枚撮って成功した1枚が120点や200点をたたき出すような、そんなカメラなのです。
だからこそ、撮影中ときに拗ねられ、無残にあしらわれても、使うことをやめられません。
Illust:なかな
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